データがビジネスの命運を左右する現在、バックアップは欠かせないものです。サーバー障害、サイバー攻撃、ユーザーミスなど、いつどんな事態が発生するかわかりません。大切なデータを失った場合、企業の業務停止や信用失墜に繋がることもあります。
そのため、システム管理者やITエンジニアには、適切なバックアップ戦略を立てることが求められます。今回の記事では、フルバックアップ、増分バックアップ、差分バックアップ、さらにはミラーリングといった主要なバックアップ方式について詳しく解説し、あなたの環境に最適な選択肢を提示します。
フルバックアップ
特徴
フルバックアップは、指定したデータ全体を丸ごとバックアップする方式です。システム全体のスナップショットを取得するため、バックアップ後にすべてのデータが保存されます。

利点
- 復元が容易: 単一のバックアップファイルからシステム全体を復元できるため、復元手順がシンプルで早いです。
- 完全なデータ保護: 全データを保存するため、バックアップの対象データが不足する心配がありません。
欠点
- 時間とストレージの消費が大きい: 全データを保存するため、バックアップにかかる時間が長く、ストレージの使用量も多くなります。
- 頻繁な実行は非効率: 毎日フルバックアップを実施するのは、ストレージやリソースに大きな負担をかけるため非効率です。
増分バックアップ
特徴
増分バックアップは、直前のバックアップ以降に変更されたデータだけを保存する方式です。例えば、前回のフルバックアップまたは増分バックアップの後に変更があったデータのみが保存されます。

利点
- 効率的なバックアップ: 保存するデータ量が少ないため、バックアップにかかる時間も短く、ストレージの使用量を抑えることができます。
- 毎日バックアップに最適: 毎日増分バックアップを行うことで、短時間で最新データを保護できます。
欠点
- 復元が複雑: 直近のフルバックアップと、各増分バックアップをすべて組み合わせて復元する必要があるため、復元作業が煩雑になります。
- バックアップチェーンのリスク: 増分バックアップの1つでも破損すると、その後の復元が困難になるリスクがあります。
差分バックアップ
特徴
差分バックアップは、最後のフルバックアップ以降に変更されたすべてのデータを保存します。増分バックアップと異なり、毎回の差分バックアップはフルバックアップを基準にデータを保存する点が特徴です。

利点
- 復元が簡単: 復元時には、フルバックアップと最新の差分バックアップのみで完全な復元が可能です。増分バックアップと比べて復元作業が簡単です。
- データ保護が確実: 毎回、フルバックアップ以降のすべての変更を保存するため、データが漏れるリスクが少ないです。
欠点
- バックアップのサイズが増加する: 時間が経つにつれ、差分データが大きくなり、バックアップの時間やストレージ使用量が増加します。
- 効率が低下する: フルバックアップを定期的に実施しないと、バックアップが次第に非効率になります。
その他の方式:レプリケーション
レプリケーションは、リアルタイムまたはスケジュールに基づいてデータを別の場所にコピーする方式です。ネットワークを通じて異なるサーバーやデータセンター間でデータを複製し、災害発生時でもデータが利用可能な状態を保つために使用されます。

利点
- リアルタイムのデータ保護:常に最新のデータが保存されるため、データ消失のリスクが最小限に抑えられます。
- ダウンタイムの短縮:障害発生時でもすぐにデータを復元でき、業務が早期に再開できます。
欠点
- コストが高い:リアルタイムの同期には高いネットワーク帯域やストレージ容量が必要で、コストがかさむ場合があります。
- データ破損のリスク:同期されるデータに問題が発生すると、即座にレプリケーション先にも反映されてしまい、バックアップとしての信頼性が低下する可能性があります。
各方式の比較表
| バックアップ方式 | 特徴 | 利点 | 欠点 | 使用場面 |
|---|---|---|---|---|
| フルバックアップ | 全データを保存 | 完全な復元が簡単 | 時間とストレージ消費が大きい | 完全なデータ保護が必要な場面 |
| 増分バックアップ | 変更データのみ保存 | 時間と容量の節約 | 復元が複雑 | 日常的なバックアップ |
| 差分バックアップ | フルバックアップ以降の変更を保存 | 復元が簡単 | バックアップのサイズが増加 | 簡単な復元が求められる場面 |
| ミラーリング | リアルタイム同期 | 最新データが常に保存される | コストが高い | 重要システムの保護 |
選び方のポイント
- データの重要性: すべてのデータが完全に必要であれば、フルバックアップを検討しましょう。もしデータの一部でも復元できれば問題ない場合は、増分や差分を使うと効率的です。
- 復元の迅速さ: 簡単な復元を求めるなら、フルバックアップか差分バックアップが適しています。増分バックアップは復元手順が煩雑なので、復元スピードを重視する環境では避けるべきです。
- バックアップ頻度とリソース: 毎日バックアップを行う必要がある場合は、増分や差分バックアップが有効です。リソースが限られている環境では、増分バックアップが特に役立ちます。
- 予算とシステムの規模: 予算やストレージ容量が限られている場合は、ミラーリングは避け、増分や差分バックアップを検討しましょう。
まとめ
バックアップ方式はそれぞれに特徴があり、使用するシステムや状況によって最適な選択肢が異なります。フルバックアップは完全性と信頼性が高いもののコストがかかり、増分バックアップや差分バックアップは効率的ですが復元に手間がかかります。ミラーリングはリアルタイム保護ができる一方で、コストや複雑さが増します。
読者の皆様は、自社のデータ量や重要性、予算に合わせて適切なバックアップ戦略を立て、データの保護に努めてください。

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