~総務・情シス担当者が知っておくべき見落としポイントとチェックリスト~
事務所移転やレイアウト変更の際、「机や什器の配置は決まったのにネットや電話がつながらない!」というトラブルは珍しくありません。移転当日になって初めて配線の問題に気づき、業務開始が遅れてしまうケースは後を絶ちません。
特に総務部門の担当者や情シス担当者(兼務含む)は、オフィスインフラの整備を任される立場にありながら、ネットワークや通信設備に関する専門的な知識が不足している場合も多いです。「IT機器の設置は業者任せ」「配線は見えないから後回し」といった考えでは、思わぬトラブルに見舞われるリスクがあります。
本記事では、そうした小規模〜中規模オフィスの移転・レイアウト変更を担当する人に向けて、忘れがちなネットワークや電話線の再配線チェックポイントを整理します。専門的な技術知識がなくても、事前の準備と確認作業でトラブルを防ぐことができます。
よくある見落としポイント
実際のオフィス移転現場でよく発生する配線トラブルをご紹介します。これらを事前に把握しておくことで、同様の問題を未然に防げます。
LANケーブルの長さ不足や配線経路の想定漏れ
既存のLANポートから新しい机の位置まで距離が伸びたため、LANケーブルが届かないケースです。特にオープンスペースからパーテーション区切りのレイアウトに変更する際、配線経路が複雑になり、想定以上にケーブル長が必要になることがあります。
電話線・FAX回線の引き回し忘れ
LANケーブルばかりに注意が向き、電話線やFAX回線の配線を忘れてしまうパターンです。特に役員室や受付カウンターなど、特定の場所にしか設置していない電話機の配線は見落としがちです。
無線LANの電波干渉やアクセスポイントの死角
レイアウト変更により壁や什器の配置が変わると、無線LANの電波状況も変化します。以前は問題なく使えていた場所で電波が弱くなったり、近隣オフィスの無線LANと干渉したりするケースが発生します。
サーバーや複合機のLAN口が届かない配置変更
サーバーラックや複合機など、重量のある機器の配置を変更する際、既存のLANポートからの距離を十分確認せずに設置場所を決めてしまうケースです。機器が重いため、後から移動させるのは困難です。
工事業者への指示漏れ
配線工事を業者に依頼する際、口頭での説明だけで済ませてしまい、必要な箇所への配線工事が漏れてしまうケースです。図面での指示や書面での確認を怠ると、認識違いが生じやすくなります。
チェックリスト(事前準備編)
移転・レイアウト変更を成功させるため、以下のチェックリストを活用して事前準備を進めましょう。
フロア図面にLANポート・電話ジャックを落とし込み
- [ ] 現在のLANポート位置を図面上にマーキング
- [ ] 電話ジャック・FAXジャックの位置も併せて記載
- [ ] 配線ダクトやOAフロアの配線経路も図面に反映
- [ ] 新レイアウト図面と照らし合わせて、不足箇所を特定
利用する機器(PC・複合機・IP電話・サーバー等)の位置確認
- [ ] 各部署で使用するPCの台数と設置予定位置
- [ ] 複合機・プリンターの新設置場所
- [ ] サーバー・NAS等のネットワーク機器配置
- [ ] IP電話機・FAXの設置場所
- [ ] 今後導入予定の機器も考慮した配置計画
必要なポート数の算出(LAN・電話それぞれ)
- [ ] 各エリアで必要なLANポート数の計算
- [ ] 電話ポート数の必要数算出
- [ ] 複数回線が必要な機器(複合機等)の確認
- [ ] ゲスト用・会議室用のポート数も加算
- [ ] 部門別・フロア別の必要数一覧表作成
予備回線(将来増設用)の確保
- [ ] 各エリアに20-30%の余裕を持ったポート数で計画
- [ ] 将来の人員増加を見込んだ配線計画
- [ ] 機器増設や配置変更に対応できる予備配線
- [ ] フリーアドレス化など働き方変更への対応余地
配線ダクトやOAフロアの確認
- [ ] 既存の配線ダクト容量と新規配線の収容可能性
- [ ] OAフロアの配線スペース確認
- [ ] 天井配線ルートの調査
- [ ] 壁面・床面の配線経路計画
再配線工事の進め方
効率的で確実な再配線工事を実現するための進め方をご説明します。
内部でできる作業と業者に依頼すべき作業の切り分け
内部で対応可能な作業
- LANケーブルの差し替えや延長(既存ポート間)
- IP電話機の設定変更・移設
- 無線LANアクセスポイントの位置調整
- ネットワーク機器の設定変更
業者に依頼すべき作業
- 新規LANポートの増設工事
- 電話回線の新規引込・移設工事
- 配線ダクトやOAフロアの大規模改修
- 電気工事を伴う作業
工事発注時に伝えるべき要件(回線種別、必要数、位置)
工事業者への発注時には、以下の情報を明確に伝えることが重要です。特に、口頭での説明だけでは認識違いが生じやすいため、図面を活用した視覚的な情報共有が不可欠です。
図面による情報共有の重要性
具体的な指示ができない場合や、複雑な配置変更の場合は、以下の図面を事前に用意しておくことを強く推奨します。
- レイアウト図面(PC配置場所明記版)
各部署・各席にどのような機器(PC、電話、複合機等)が配置されるかを明示した図面 - 完成予定の内装図面
パーテーションや什器の最終配置が分かる詳細図面 - 現状の配線図面
現在のLANポート・電話ジャックの位置を記載した図面
これらの図面があることで、工事業者は必要な配線工事の範囲と内容を正確に把握でき、見積もりの精度向上と工事ミスの防止につながります。
必須伝達事項
- 新規設置が必要なLANポート数と正確な位置(上記図面を必ず添付)
- 電話ジャック・FAXジャックの設置箇所
- 既存ポートから移設が必要な箇所
- 工事完了希望日・時間帯
- 立会い可能な担当者と連絡先
技術仕様の確認事項
- LANケーブルの規格(Cat5e、Cat6等)
- 電話回線の種類(アナログ、ISDN、IP等)
- 配線方法(露出配線、隠ぺい配線、OAフロア内等)
- 使用する配線材料やジャック・プレートの仕様
工事時の立会いで確認するポイント
工事当日の立会いでは、以下の点を重点的にチェックしましょう。
- 図面通りの位置にポートが設置されているか
- ラベリングが正確に行われているか(どのポートがどの回線か)
- 配線の取り回しが美観を損ねていないか
- 今後のメンテナンス性に問題がないか
- 工事完了後の疎通確認を必ず実施
移転・レイアウト変更後の確認事項
工事完了後は、以下の項目を順次確認して、すべての機器が正常に動作することを確認します。
ネットワーク機器が正常に稼働しているか(Ping、インターネット疎通)
各端末からインターネットへの接続確認を行います。単純にWebサイトが見られるかだけでなく、社内サーバーへのアクセスやメールの送受信も含めて総合的にチェックしましょう。
具体的な確認方法
- 各PCからのインターネット閲覧確認
- 社内サーバー・共有フォルダへのアクセス確認
- メールの送受信テスト
- 社内システムへのログイン確認
- ネットワークプリンターの動作確認
電話の発着信確認
全ての電話機で内線・外線の発着信が正常に行えるかを確認します。転送設定や留守番電話機能なども含めて動作確認を行いましょう。
チェック項目
- 外線発信・着信の確認
- 内線通話の確認
- 転送・保留機能の動作確認
- FAXの送受信テスト
- 会議室・受付電話の動作確認
複合機やプリンターの接続確認
ネットワーク接続されている複合機やプリンターが、全ての端末から正常に利用できるかを確認します。
無線LANの電波範囲チェック
各エリアで無線LANの電波強度を確認し、業務に支障がないレベルの通信速度が確保されているかを確認します。特に会議室や休憩スペースなど、普段あまり使わない場所も忘れずにチェックしましょう。
トラブル防止のコツ
長期的な視点でオフィスのネットワークインフラを管理するためのコツをご紹介します。
変更前に必ず「現状の配線図」を作成しておく
移転・レイアウト変更の際は、事前に現在の配線状況を詳細に記録しておきます。これにより、新しいレイアウトでの配線計画が立てやすくなり、工事業者への指示も正確に行えます。
記録すべき情報
- 各LANポート・電話ジャックの位置と番号
- どのポートがどの機器に接続されているか
- 配線ダクトや隠ぺい配線の経路
- ネットワーク機器(ハブ、ルーター等)の設置場所
- 電話交換機や主装置の配線情報
移転後は「配線マップ」を更新して共有
移転・レイアウト変更完了後は、新しい配線マップを作成し、関係者間で共有します。これにより、今後のトラブル対応や機器増設時の作業がスムーズになります。
配線マップに含めるべき情報
- 最新のフロア図面と配線経路
- 各ポートの用途・接続機器一覧
- 予備ポートや将来増設可能箇所の表示
- 緊急時の連絡先や対応手順
- 定期メンテナンススケジュール
将来的に増員・機器増設があっても対応できる余裕を持つ
オフィスのネットワークインフラは、現在の需要だけでなく、将来的な拡張性も考慮して構築することが重要です。人員増加や新システム導入時に大規模な工事が必要にならないよう、あらかじめ余裕を持った設計を心がけましょう。
将来への備え
- 各エリアに20-30%の予備ポートを確保
- フリーアドレス化に対応できる配線設計
- 新技術(Wi-Fi 6、IoT機器等)への対応余地
- セキュリティシステム拡張への配慮
まとめ
ネットワークや電話の再配線は、オフィス移転・レイアウト変更において見落とされがちな重要事項です。しかし、事前のチェックリストと図面管理、そして段階的な確認作業を行うことで、トラブルを未然に防ぐことができます。
総務・情シス担当者が意識して準備することで、移転後の業務停止リスクを最小化できるのです。「配線は業者任せ」ではなく、担当者自身が基本的なポイントを理解し、計画的に進めることが成功の鍵となります。
特に重要なのは以下の3点です。
- 1. 事前の現状把握と詳細な計画立案
現在の配線状況を正確に把握し、新レイアウトに必要な配線計画を立てる
- 2. 関係者との綿密な連携
工事業者、各部署、経営陣との情報共有を密に行う
- 3. 段階的な確認と記録の更新
工事完了後の動作確認を確実に行い、新しい配線情報を記録・共有する
これらのポイントを押さえることで、「移転したのにネットがつながらない」といったトラブルを避け、スムーズなオフィス移転・レイアウト変更を実現できるでしょう。

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